従来むし歯の検査では、肉眼での検査とレントゲン検査が行われてきました。
レントゲン検査は目に見えない箇所の診断に有効ですが、3次元的な構造を持つ歯の状態を2次元のフィルム上で判断するため、歯科医師の経験則による診断になったり、初期むし歯の発見が遅れてしまう可能性があります。
当院では、従来の方法に加えてレーザー光を応用したダイアグノデント ペンを用いた検査を行っています。
ダイアグノデント ペンは歯にそっと沿わせ、表面に655nmの低出力のレーザー光を照射するだけなので、痛みもなく、小さなお子様や妊婦の方にも安心して使用することができます。
レーザー光は測定しにくい歯と歯の間や、咬む面の溝奥深くに潜んでいるむし歯のもつ特性である蛍光反射を読み取り、数値化します。
現在の状態を数値化することによりむし歯の進行状態を把握し、管理することが可能です。
初期むし歯は適切な予防プログラムで管理を行うことで、削らずに済む場合があります。
むし歯になってしまったら、歯を大きく削って治療すると思っていませんか?
一昔前までは、歯を大きく削っていましたが、最近では治療法が改良されて、健康な部分は削らずに残すことができるようになりました。
むし歯治療の基本は、MI(Minimal Intervention)の考え方に則り、なるべく削らずに歯を残す治療です。
虫歯が発見された場合は、う蝕検知液という虫歯の部分だけを染める検査液を使って、悪い部分だけをていねいに取り除いていきます。
検知液に染まり、むし歯によって柔らかくなった部分は軟化象牙質と呼ばれ、削っても痛みを感じる事はありません。
従来の治療法のように歯を削りすぎでしまうことがないことに加え、むし歯の取り残しも防ぐことができます。
むし歯治療は、悪くなってしまった部分とはいえご自身の歯の一部を取り除く治療です。
患者さんは痛みに対する不安、治療内容に対する不安、歯を削る際の音や環境に対する不安など、様々な不安を持って来院されると思います。
治療イスに座るだけで患者さんの血圧が上昇するという報告もされているほど精神的、身体的に負担となるものです。
不安が強いと緊張のあまり、ちょっとした刺激でも強い痛みと感じてしまいます。治療に対する不安をなくすために、痛みに配慮した治療を心がけております。
痛みを伴う治療の際は、麻酔をかけて痛みのコントロールを行います。
麻酔の際の順序は次の通りです。
- 1.
- 表面麻酔で注射針を刺した時の痛みを軽減する
- 2.
- 痛みの少ない極細の注射針と温度管理された麻酔液を用意する
- 3.
- 痛みの感じにくい部位へ麻酔を行い、時間と速度をコントロールしながら徐々に麻酔をかける
- 4.
- 麻酔が浸透するまで適切な時間を取り、麻酔完了
重度のむし歯は刺激により歯の中が充血や炎症を起こしやすく、興奮した神経(歯髄)を和らげ、保存する処置が必要になります。
特にむし歯の除去時に歯髄が露出した場合は、通常は水酸化カルシウム製剤というお薬で歯髄の保存をしますが、年齢や歯髄の状態によっては治療が上手くいかない場合があります。
結果的に神経を取る処置(抜髄処置)が必要になることもあります。
歯の神経を取るほどの大きなむし歯では、構造的に歯が脆くなってしまい、歯の寿命が短くなってしまいます。
厚生労働省による調査では、歯を抜く原因の第3位は歯の破折と報告されており、歯髄を残すことは歯の寿命を延ばす観点から非常に重要とされています。
当院では通常歯髄を取るような症例に対し、ケイ酸カルシウムを主成分としたMTA直接覆髄療法(歯髄保存療法)を行うことで、「神経を守る」「歯を残す」治療に取り組んでおります。
MTA(Mineral Trioxide Aggregate)とは、ケイ酸カルシウムを主成分とし、生体親和性や封鎖性が高く、抗菌性に優れた革新的な材料です。
多くの細菌はアルカリ性に弱く、PH9.5で死滅されると言われています。MTAセメントは、治療3時間後にはPH12.5と強アルカリ性へと変化し、高い殺菌性を備えています。